かやのみ日記帳

日々感じたことをつれづれと書いています。

図書館の機能と満足度向上を目指すCode4Libがものすごく大好き。

 

図書館が好きになったのは、大学で学問の楽しさに目覚めてからだった。これまで目を向けてなかった図書館の有用さに驚き、もっと図書館を知りたいと思った。これから先図書館はどのようにして活動していくのか。IT化や電子書籍の登場は図書館にとってどのようなメリットを生むのかということも気になってきた。

 

そんな中でCode4Lib JAPAN を知った。やっぱりnext49さんの記事からである。本当に面白かった。図書館に勤めている人というのは本が好きなんだろう。図書館という職場に対する話だけではなく、取り扱う本や出版、利用者、読書家の方々などのことを真剣に考えている。一つ一つの発表が練りに練られていて面白すぎる。

そもそもCode4Libというのはアメリカ発祥らしく、その日本版を有志が運営しているということか。利用者の図書館に対する満足度向上を目指すという目標は面白い。

Code4Libは、アメリカを中心に活動する図書館関係のプログラマ、システム技術者を中心としたコミュニティです。Code4Lib JAPANは日本支部となることを目指す団体です。

 

Code4Libは、図書館の情報技術活用に関するエキスパートたちの集まりですが、Code4Lib JAPANでは、日本の図書館における情報技術活用の停滞という現実を踏まえ、エキスパートに限らず、一般のライブラリアンに広く門戸を開放することで図書館における情報技術活用を促進し、図書館の機能向上と利用者の図書館に対する満足度向上を目指します。

 

2015年度発表からiBeaconでデータ取りをした話が面白い

www.slideshare.net

上記の発表は非常にエキサイティングだ!ここまで活動的な図書館があるなんて、千葉大学が羨ましすぎる。自分が受験生なら間違いなく第一希望にしてたかもしれない。ともかく内容で面白かったことをピックアップする。

 

まず研究背景として千葉大学では過去に様々な調査を行ってこれでもかというぐらい情報収集していたことを挙げる。恐ろしいのは定点カメラ、更には成績との連動付け…。思わずよだれがでるデータ群だろう。だがこれでも”足りない”とする貪欲さには驚く。

そして行き着いたのがiBeacon 296個を使った館内移動データ、空間利用の測定である。協力インセンティブも用意しているのが抜け目なくて面白い。得られたデータはどれも非常に魅力的に見える。

 

このデータを分析すれば、初めて来館した人がお目当ての書籍を探し当てるまでどの程度かかるのかわかるかもしれない。迷ってしまった経路も記録されるので、どのジャンルと混同してしまうのかも把握できる。貸し出した記録はもちろんわかるし、返却記録も存在する。となれば既に貸出済みの本を探しに来た人がどうするのかというのも面白いだろう。成績に紐づけて滞在時間や貸し出し記録、更には利用時間帯なども集積できる。

面白そうなのは一番人気の休憩所とか。日当たりがいい席が先に埋まっていくのだろうか。それとも静かで落ち着くところだろうか。こんなに大量のデータが目の前にあったら喜びで気絶してしまいそうだ。これだけの実験を情熱的に進めて、Code4Libで発表しインターネット公開されているということは本当に素晴らしいことだと思う。願わくば続報をお聞きしたいところだ。ひょっとして出ているのかもしれないが、ちょっと見当たらない。千葉大学生にしか公表されないとすれば少し寂しい。勝手にしっぽを振って待っている読者がここにいます。

 

実はみんな自分の中で関連付けて、ハイパーリンク化している?

Code4Libの2015年度基調講演の「未来の書物への夢想またはもうひとつのハイパーテキスト論」に書かれている内容が非常に面白すぎる。

www.youtube.com

Youtubeの発表も面白いのだが、話している内容が濃すぎて長くなってしまっている。オススメとしては電車の中でmp3として聞いてみるといいかもしれない。

発表内容が素晴らしく凝縮されているのがこちらのWeb文書と電子書籍 製本機能としてのspine情報という論文だろう。この論文は全ての文章を引用してもいいぐらい重要な示唆に富んでいて、記事の編集時間を大幅に削られてしまった。読んでいる間にどっぷりハマってしまい、様々なアイディアが浮かんできて大変だった。

自分が大いに共感して響いたのはこの文章。

かつてのハイパーテキスト論ブームの折に盛んに論じられ,筆者もさまざまに思考を巡らせたことではあるが,ハイパーテキストのまさに蜘蛛の巣のようなリンク構造を選択的にたどることは,読者の側から見ると,読文行為の時間軸に沿った線形化ととらえることができる。この線形化という行為は,情報エントロピーを減少させる行為ととらえることができよう。それを,読者が自分自身の物語を紡ぎ出す行為だと言い換えてもよい

紙の本においても,索引の制作が本文の著述とは独立しうる優れて知的な創造行為であることは従来から論じられている。ハイパーテキスト構造によるリンク付けの作業が,多様な文脈による読文行為の可能性を拡げることは,将来の電子書籍の在り方を考える上で,さらに重視されてもいいように思われる。

これ、前回の serial experiments lainで考察した考え方と似ている。もしかするとlainそのものがハイパーリンク論に基づいた作品なのかもしれないと思い始めた。実際、再生する音声ファイルには全て3つの単語タグで結びついている。

lainという作品は間違いなく小説という紙で印刷された本ではない。ただ番号が振られたファイルが置いてあるだけである。あたかもリンクのように。そしてそれを辿っていくのはプレイヤーの意志である。どのように辿るか、そしてどのように戻っていくのか、どのように物語を編み込んでいくかはプレイヤーしだいだ。これは読書や物語を解釈するという人間的行為をかなり鋭く描いているのではないか。

 

本という形式は最初から最後まで連番になっている。1ページ、2ページ。だが実際に読む読者というのは途中まで読んでから最初にも戻れるし、二週目を体験することもある。二週目では最初にわからなかった登場人物の行動の謎について理解できるようになるというのも魅力だ。また、辞書を片手に必死になって読み解くこともあるだろう。Webでも気になった単語を検索し、そのままたっぷり知識を漁ってから読むこともあり得る。

いうならば本というのは、一見読み方を強制されていて一方向であるように見えるがそうではなく、読者の数だけ読み方が違う。読者は勝手に自分の中の知識や外部の知識とを関連付ける、言うならばリンクさせる作業をしていると言っていいはずだ。あたかも本にアンダーラインをひくように、重要だと思われる個所は自らの考えを巡らせ、脚注をつけるように新しく自分だけの物語を紡いでいるのかもしれない。

 

おわりに

今回Code4Libの内容のほんの少しを触れてみたけれど、正直熱量に負けてしまった。自分が必死になって自分の内側から書き出す内容よりも、受け取る情報量があまりにも多すぎた。実際に会場に足を運んでいたらめちゃくちゃ興奮していたかもしれない。

参加してもいいのかわからないけれども、次回参加できるならしてみたいなあと思っている。すっごい楽しいだろうなあ…。