かやのみ日記帳

日々感じたことをつれづれと書いています。

夏の作品と言えば夏の庭 The Friends

 

夏の思い出のような作品と読書感想文

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

夏の庭―The Friends (新潮文庫)

 

夏の作品と言えば自分にとっては夏の庭 The Friendsである。夏休みの課題図書か何かだったと思うけれど読んでいて大変に楽しく、それでいて切なさがたっぷりの王道ストーリーはずいぶんと惹きこまれた。実は映画版もあるらしいということが今更調べてみてわかった。が、何といっても小説の温かみは忘れがたい。

 

偏屈なおじいさんの心を子供の純粋な気持ちでどんどん解きほぐしていくある意味横道なストーリー。おじいさんは長くは生きられないことはわかっている。お互いに何の接点もないはずだったのに、いつの間にかゆるくつながった信頼で結ばれていく。

 

おじいさんは子供たちがいてくれてきっと幸せだったのではないか。子供たちにとってはどうだっただろう。おじいさんに対して不誠実であったとかおじいさんに恩返しができたのか。単純なストーリーの中にある登場人物の視点を変えることで互いの心の内側にまでいろいろ想像したくなるような作品だと思う。間違いなく読書感想文などには適していると思う。

 

ただ、子供の頃の自分にはこの漠然とした感動、得られたなにか…本当にそばで味わったような”誰かの思い出”。その気持ちをうまくは表現できなかった。つらつらとこの行動はこうだったと思う、おじいさんはこういう気持ちだったと思う、それだけで終始していた気がする。

 

なんとなく今それを想うとちょっと面白い。子供の頃に本当に書きたかったこと、本当は自分が何を書きたかったのかを理解できるからだ。それは上からの目線とか年を重ねたからというわけじゃなくて、恥ずかしさを克服できた、受け入れられたからだと思う。

 

読書感想文というのは恥ずかしさを超えないとダメじゃないかと思う。自分の心にどのように響いたか、自分の心というものがどう感じたかをしっかりと書かないといけない。それには人に自分の心を正直に、それでいて精緻に教えないといけないからだ。

 

子どもの頃はなんだか緊張していたように思う。集団生活では周囲から浮かないようにするのが一苦労だった。目立たないように生きるという外圧があったから何かを発表する機会なんかは憂鬱だった。自分の想いを正直に書いたら笑われる、それどころか「何を真面目になってるの」とか言われて排斥されかねないからだ。

 

そういった学校という環境とか自分の性格面もあって読書感想文では当たり障りのない文章をさらさらと書いていた。けれども本当の自分の気持ちは向き合えていなくて、それでも誰にも話せなくて鬱々としていた。それが高校、大学と続いていけば積もり積もったものがある。

 

だからきっと溜まった鬱憤を今、大人として、自由なインターネットに向けてのびのび書いているんだろうなあと思う。子どもの頃の自分が見たらもしかするとずっと羨ましがったかもしれない。自分の気持ちを正直に人に話せるということがどれだけ救いかを知ってるはずだから。

 

おわりに

これとセットになっているのが西の魔女が死んだではないだろうか。こちらもやっぱり課題図書としても優秀だし、名作として名高いはずだ。一度はみんな読んだことがあるのではないだろうか。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

 

 西の魔女が死んだもまた似たような展開かもしれないけど、夏の庭は不器用な優しさに対して西の魔女はとても温かみのあるストレートな優しさだったと思う。素敵な年の取り方をした人というのはそれだけで尊敬しちゃうなあと思わされた作品だった。

 

もしかするとブログでも同じように夏休みの課題図書だとか読書感想文なんてやってみても面白いかもしれない。まあそこそこ本を読んだ感想の記事も書いていて、原稿用紙6枚くらい書いているので当時の自分もびっくりであろう。

 

当時はなんとか4枚か5枚くらいがやっとだったような気がする。2~3枚目が非常に薄っぺらくて困っていた。一枚目と最後は序論結論だからしっかりと書けるのだけど、中身の展開がどうにも根っこがなくてふらふらしていたように思う。それもまた読書感想文にちょっと後ろめたさというか、真剣に書いてないじゃないかと少し寂しい気持ちにもなった。ただ、心理的なセーブというかそういったものが無意識にかかっているとも知らずに悶々としていたように思う。

 

これからも自分が書きたいと思うものには自分の心についてもきっちりと書いていきたい。そういったことをこの記事を書きながら思い出せた気がする。ちなみにこの記事は原稿用紙4枚分という感じだ。そしてはみ出たこの文字で5枚分…こういうのも昔はやっていたなあ、なんて思い出です。