かやのみ日記帳

日々感じたことをつれづれと書いています。

「わからないことがあれば聞いてください」じゃなくて「確認したいことはありますか」と言ってみる。

 

大学の授業補助をしていた頃に考えていたこと。それは本当に困っている人から質問されない事だった。学生にはいろいろタイプがあると思うが、真面目でやる気のあるタイプとかふざけた態度のタイプ、そして無言タイプについて自分のとっていたスタンスを紹介する。

 

真面目タイプは安心してサポートに徹する

だいたい自分の中で答えを持っていて、それを確かめるために質問するタイプだ。こういう場合は若干不安があるのでお墨付きをもらいたいという気持ちなのかな?と思いつつ、確かめ方を伝授したりする。結局合っていることを教えてしまうと考えるのをやめちゃったりするので、そこはグッと堪える。

 

だいたい優秀なタイプなので放っておいても自分で進んでくれる。このタイプの質問に対して安易に答えずに、むしろもっと深い落とし穴に誘導してあげると喜んで這い上がってくれる。それに先へと進むリーダータイプの場合は周囲の先生役を務めてもらうことで労力が減るし、近場で仁王立ちして「さすがだ…」とか「我らより教え方がうまい…」とつぶやいているとより頑張ってくれる。まあある程度冗談だが、教えたほうが身に着けやすかったりする。間違ってたらきちんとサポートするという監督的立場が非常にやりやすい。ともかく質問する/質問されるという立場から一歩抜きんでたタイプなので置いておく。

 

おふざけタイプは寝ている間は事務に徹する。でも絶対に見捨てない

ふざけた態度は「答え教えて下さい」とか「今なんて言ってました?」とかなので、非常に簡単でストレスがたまらなくていい。答えは教えられないし、なんて言ってたかは周りに聞いてねで済む。連絡事項を聞いてないのはまあどうでもいいので教えてあげることもある。だいたい本人たちも単位の為とかでやる気がないので放置してあげる。点取る方法教えてくださいとストレートに聞かれたら、うん勉強しようねで済むし対応が本当に楽だ。彼らは友人ネットワークが優秀である為にだらけていても大丈夫という舐め切った態度をとっているので、こちらも真面目に取り合わなくてよいと思う。

 

ただ、たまに覚醒することがあってそれを見るのは本当に嬉しくてしょうがない。一転して猛烈に真面目に、本当に楽しそうにたった一人でも突き進む。友人たちがサボったりいなくなっても猛然と課題に取り組みだす。教師の真似事的な立場としては本当に嬉しい。

 

ある時、真面目に答えてくれないだろうなーとかネタとして質問してきただろう内容に対して本当に面白い質問だったので、こちらも本気+圧倒的熱量で答えたところ、目を見開いてスゲー…と呟き、じゃあこれもこれも、こういうことだったんッスカ!?とか聞いてくるので、左様…と答えると改めて感動+反省したらしく、それ以来めちゃくちゃ真面目に授業を聞き、真面目な質問ばかりしてくる非常に優秀な学生へと変貌した。

 

というかなんか懐かれたらしくガンガン手を挙げるようになった。教授にはえらい懐かれたね…と笑われてしまったが、まあ成績が見違えるようによくなってそのグループにも活気が満ちたのでよかったなと思う。こういう不真面目で寝てたりするタイプは基本的に質問に対してテンプレート的対応を心がける。授業内容についての質問の際には相手の求める範囲だけで答えることにしている。ただ絶対に質問の間口を閉ざすような態度はとらない。バカにしたり嫌味を言ったりしない。態度を咎めることもしない。そういうのは講義の主役の責任でもあるので、まあそっとしておく。自分の感情を籠めないように事務的な態度で接することに徹する。どうせ起きていても寝ているようなものなので、何かしら目が覚めるきっかけがあるまでは踏み込みすぎないようにしている。

 

無言タイプはこちらから踏み込んで承認してしまう

さて、一番困ってしまうのは質問せずに自分でうーん…となっていて進まない人たちだ。こういった人々に「困ったことやわからなくなったらすぐ聞いてね☆」といっても「はいっ」と言って後は静寂のまま…という感じだ。正直まったくといっていいほど効果がない。

 

こういうタイプは自分が属しているからわかるのだが、仲間に恵まれていないタイプが多い。基本的にすべての講義で同じようなことが発生していると思っていい。自力で解かねば生きられぬタイプなので質問する回路がさび付いていることが多い。他人というものに遠慮してしまうというのもある。それにわかってないところがわかってなかったりして時間がかかっているので、聞いてみて教えてくれる人を自分ひとりで占領するのはあまりにも悪目立ちしてしまう。そういった目立ったことをするのは嫌なタイプかもしれない。もしくはお店に行って「お困りですか?」といわれると「やめてくれー!」と絶叫して逃げたくなるタイプかもしれない。私に構わないでうざいからタイプは構うとこちらも傷つくのでつらいところだ。

 

こういった人々に対して声掛けをする際には「わからないところありますか?」とか「何でも聞いてください」じゃなくて「確認したいことはありますか?」と聞くと良い…という話をネット上のどこかで見かけたことがある。そうすると自然と学生が効きやすくなって挙手率が上がったとのことだった。

 

だいたいこういった「なんでも聞いてください」系はテンプレート対応と化しているためありがたみがなく空虚にしか聞こえないという問題がある。店員さんの言う「またのご来店お待ちしてます」ぐらい残念ながら耳に残らないし、心に響かない。更にはなんでも聞いていいって言ったのに忙しくて断られたり雑に対応されたり馬鹿にされたり嫌味を言われたりとまあ裏切られたと感じてしまう経験もよくある。

 

それにめげず頑張ってくれたまえ…というのはさすがに努力を相手に要求しすぎてるなあと思うので、質問の時の障壁を下げるべく、確認したいところはありますか?というと楽になる。質問ではなく確認ならば、「わからないから」→「聞く」ではなくて「確かめたいから」に変わるところがミソかもしれない。

 

そこから一歩推し進めて学生に過度な期待をもったりせずに、むしろ学生の感情の省エネに貢献しようと思ったことがある。もう先にこちらから「いやもう全然わからないよね?」と思いっきりフライングして聞いてしまうのだ。そうするとちょっと苦笑いして「いやまあ…」「難しくない?」「難しいです」「だよね。どんな感じ?」となる。

 

そして質問の際に思いっきり学生の評価を下げてしまっているので、きっちりと上げておく。「大丈夫、全然できてる、みんな躓くところだし、たいしたことない」とか。まあなれなれしくてオススメはしないものの、心理的な障壁を取り払うのには効果的だ。そしてこういった学生の不出来に対してきっちりと許容されますよ、承認されますよ、こんな質問でもばっちり大丈夫ですよと不安にさせず、むしろよい好例として取り扱うことでそのグループ全体からの質問頻度を向上させることができる。

 

そしてなによりなるべくひとりぼっちにさせないことだ。なぜか隣に座っている人同士がまったく同じところで唸っていることが多い。そういったときにむしろ自分で答えずに橋渡しする。この問題ってどう?解けた?みたいな感じで会話を促す。正直おせっかいすぎて胃が痛くなるのだが、それでも少し自分をダシにして少し笑いをとりつつ和やかに、いっしょに課題を解く仲間であることを認知させる。もちろん個人で解くものも多いが、それでも困ったときに気軽に聞けるのは同期の人間である。それにそうしたほうがよっぽど両者の教育のためになる。悩みを共有したほうが友情は育まれやすい。

 

こうしてひとりぼっちを防止してちょっとした連帯感を出してあげることで質問するときに自分ひとりで占有しているわけではなく、グループとして召喚したという形になりやすいので一人当たりの召喚コストが減るというのが大きいんじゃないかと思う。そしてこの輪が広がることによって講義全体が非常に聞きやすい環境になって自然といい学習効果へとつながるのではと考えたりしていた。

 

おわりに

質問してくださいと言ったのに質問に来ないのはいったいどういうこと!?となることはあるとは思います。そこから一歩進んでみて、一気に懐に入って承認するというのもありますよ、という紹介です。まあ禁じ手のようなものなので万人受けしないものだと思いますが。

 

ともかく学生が質問にこないのは寂しいものです。より質問しやすいような環境づくりの様々な技術が幅広く共有されるといいなあと思います。