かやのみ日記帳

読書の感想や思想を書いています!

小説の不思議な構成に思うこと

 

違和感のあるパーツ

小説の構造について考えるのが好きだ。もっと大きく言えば物語の構造を知るのが好きと言ってもいい。物語は一番大きい柱としてメインのストーリーがある。が、多くの物語にはメインを支える小さな話が散りばめられている。その小さな話が好きだ。

 

例えば「いなくなれ、群青」だったらピストルスターの話が好きだ。これはまあ、メインストーリーとも言えるかもしれないが、どうしてもそれじゃなきゃいけなかったのか?というとそうでもないと思う。でもそれがあるからメインストーリーが際立つ。

 

模倣犯1 (新潮文庫)

模倣犯1 (新潮文庫)

 

自分がこうしたメインストーリーを支える小話に気づいたきっかけは宮部みゆきの「模倣犯」だった。模倣犯は長い小説だ。文庫版でなんと5巻とはすごい分量だが最初の山を乗り切ればあっという間に読み終えてしまうほどの急展開が魅力だと思う。

 

そんな「模倣犯」の劇中に出てくる話で一番好きなのは「建築家」の話だ。この「建築家」は家にはありとあらゆる性格が出るんだと語る。例えば窓が三角形で玄関に伸びているならば、家主は外からの客を歓迎したくない、という攻撃の意思表示なのだとか。曖昧だがこんな感じだったと思う。

 

こうした著者の知る貴重な小話みたいなのがストーリーに絡んでいるところが好きなのだ。なんていうのか、まるできれいな石垣の一つの石に目を引かれるというか、その頑丈さや存在感に感動するというか…。

 

そうした小話は本当はあまり重要ではないはずなのに、メインストーリーとかなり上手く噛み合い、なくてはならないものになり、そしていい味を出している。素材の調理の上手さをじっくりと感じてしまう。完成されている絵からパズルのピースを作り出したかのようにキレイにハマっているようにすら感じる。

 

なんていうか本当は小説の外の世界の大きな知識の一部だったものをうまく小説の中の世界に引き込み、その上で調和させられているから感動するのだ。本当は著者が好きだとか必死になって資料をかき集めて作り出したものなのかもしれない。そうしたほんの少しの違和感と、外の世界へのつながりを少し感じるところが好きだ。

 

大雑把に言えばストーリーのメタ要素に惹かれるという風にも言えるのかもしれない。でもそれは露骨でなく、そこになくてはならない著者の引き出しというかまるで料理の楽しみのように感じられる。自分も知っていて少し理解できる自分の世界のものだからより面白く感じられるのかもしれない。

 

物語を読む上で架空の要素や舞台、人間関係、事情などがある中でそれを支える小さな現実世界のパーツたちがあり、そのパーツが文章表現によって接合され見事な作品となっている。その小さな違和感のあるパーツを小説に組み込み、それらが活き活きとしているとたまらなく素晴らしいことのように思うのだ。

 

おわりに

小説の不思議な構成と書いたけれど、小説とはだいぶ現実とは離れた架空の話であることが多い。そうした架空の中で現実のものを持ち出して埋め込むということはリアリティのバランスを取るためなのかもしれない。

 

事実は小説よりも奇なりとは名言だが、そうした現実の奇妙なこと、不思議なことや感傷的なことを小説に埋め込むことでそうした成分をうまく活かせるのかもしれない。まるでよくできた料理のようだ。最初のイメージはお城の石垣のイメージだったが、実際には料理のように素材のそれぞれを活かしたモノというイメージのほうが正しいのかもしれない。

 

むかし国語の授業で先生が時系列を視覚化してくれたことがある。わかりやすくメインや重要なことは赤で、関係ないことだけど関係あることを青とか緑で書いてくれていた。そうしてみるとやっぱり小説はどれがかけてもダメなんだなあとしみじみ感じたのを覚えている。しっかりつながっている小説は本当に綺麗だ。

 

自分は監督などのオーディオコメンタリーが好きで、なぜこうした小話を入れたのか、入れたかったのかをとても知りたくなる。というかむしろ、そういう部分まで含めて楽しみたいのだ。小説自身も楽しみたいし、小説が産まれるまでの過程も楽しみたい。そんな風に思っている。