KENSHIはSteamで販売されているインディーのマイナーなゲームだ。
一人で10年かけて作られたと言われており、完成度はなかなか高い。
特徴的なのは難易度の高さだ。他のゲームでは考えられないほど苦難を強いられる。
KENSHIの一番の特徴としてはプレイヤーのスキルレベルが非常に上がりづらいこと。
ゲーム開始時点ではスキルレベルがほぼ1であり、これはそこらへんにいる盗賊と比べると10倍は弱い。10倍である。勝ち目は100%ないと言って良い。
例えるならLV1生まれたて VS LV15のモンスターぐらい酷い。おまけに複数人で襲いかかられるパターンが多く、お金もないしいい武器もないのであっさりとやられる。
その割に成長はかなりシビアだ。一回の戦闘でスキルはほとんど上がらない。
なにより「弱い敵と戦って得るものはなにもない」という独特のゲームシステム的哲学が存在しており、絶えず強い敵と戦わないと成長できないのである。
その成長すら通常のゲームでは考えられないほどに遅い。経験値が小さすぎる。
普通のゲームの1/5ほどしかないと思って良い。かなりながーい時間かけてじっくりと成長させないといけないゲームデザインになっている。なぜだろうか。
おそらくだが、多くのゲームはプレイヤーのストレス軽減や強くなることの快感を重視していると考えられる。RPGだってレベルは普通に上がるし、Falloutなどのゲームだって地道にレベル上げはできるはずだ。だが、KENSHIは違うのである。
これはおそらくインディーゲームだから許される難易度調整だろうなと思う。たぶんだが複数人開発者がいれば明確にここまでしんどいレベルデザインには反対の意見を持つはずだ。なにもここまで厳しくしなくても、という。
だが、作者はそれを許さなかった。KENSHIの中には独特のゲーム哲学があるとしか思えない。強い敵と何度も戦い、傷つき、破れ、時に奴隷に落ちてしまう。腕や足を傷つけられ、酷いときには欠損すらする。欠損すれば武器も握れず、走れもせず…普通は絶望しかない。
けれどKENSHIはゲームデザインから傷つくこと前提としか思えない。欠損部位はより強くなれる義肢システムがある。いい義肢は生身よりも強い。強さのために肉体を捨てるプレイヤーが多いと言う。アーマードコアでもおなじみといえばおなじみだが。
ほかにもだが、倒れるたび打たれづよさが上がり、失神しずらくなる。継続戦闘能力が上がるのだ。じりじりと、ちょっとずつ生き延びやすくなっていく。しぶとさだ。
KENSHIの世界は荒廃しており、食料も武器も防具もなかなかいいものが手に入らない。強い武器は強いものからしか手に入らない。自分で作るものには限界がある。だから戦ったり、隠れる技術を高めて奪い、盗むしかない。まさしく弱肉強食。
そんな世界で強いものが誘拐・生死不明の状態になると都市がまるごと他勢力に制圧されたり、荒廃したりする。これがまた面白いのだ。世界の情勢が変化する楽しさ。周りには多数の勢力があり、群雄割拠となっている。10じゃ足りないほど多くの勢力、種族があり、それぞれストーリーがある。
そして土地もまたものすごく広い。都市も多ければ国も多い。それぞれ勢力があるし、遺跡もあるし…とにかく大変だ。正直Oblivionなどとも変わらない探索の苦労を感じる。移動にもものすごい時間がかかる。
だが、これらもまた…インディーとしての良さ、10年かけた個人開発者の哲学があるよなあと思う。成長がゆっくりで、非常に苦行な成長システム。あまりにも多い勢力、種族、都市。敵性生物に、遺跡探索。
これらはたぶんだがゲーム寿命を伸ばしたかったんだろうなと思う。ゲーム開発者自身が、自分のゲームを末永くプレイしたい。自分が好きで作ったものだから当然だろう。
だから成長が遅い。それでも成長したとき「あ~ずいぶん強くなったなあ」としみじみ思えるだろう。
このゲームは基本個人で戦えることはない。軍団を率いて制圧するようなゲームだ。1vs1でさえ常に危険の隣合わせになる。能力が互角であろうと、負けるときは負ける。なので仲間を率いて複数で制圧するのが望ましい。弓兵を3人、前衛を3人でようやく一人と安心して戦えるとすら思えてしまう。
そうすると仲間も育てなきゃいけない。仲間のための食料生産、装備を買う資金。生活の拠点づくりなどやることは山ほどある。そんなにしんどいことを…と思うかもしれないが、やはりゲームをずっと楽しみたいのだろう。そういうデザインになっていると思う。
KENSHIはほかのゲームにはない、ものすごい厳しさがある。だがそれが長いゲームプレイを可能にしていると思う。