かやのみ日記帳

日々感じたことをつれづれと書いています。

TUNICクリアした

 

読めないゲーム、それがTUNIC。

TUNICは画面内の文字が読めないゲームである。それだけで独自性がある気がする。
ゲームはアクションRPG、もっというとぶっちゃけダークソウルじみている。

ゲームオーバー時は20…ポイント?(ゲーム内の単位が読めない)その場に落とす。
あとで取りに戻ることができる、いつものダークソウルじみたシステムだ。

 

HPの回復はエスト瓶システムで、祭壇っぽいところでレベルアップができる。
敵は結構強く、武器はほぼない。魔力はあるが、それだけじゃ攻略が難しい。
マップはなかなか広く、進めていくとショートカットが開通する。

主人公はかわいい狐さん。敵もローポリで非常に可愛いデザインをしている。

 

そう聞くとかわいい系ソウルライクゲームか~と思いがちだが…

他のゲームと全く違うのは、操作方法がいっさいわからないのである。
なぜならUIも全く読めないし、ストーリーもわからない、チュートリアルもないから。

ただ一部は読める。AボタンとかRTボタンとか…たまーに翻訳されているのでわかるのだが、ごく一部を想像しながらやっていく。アイテムも効果がいまいちわからないので、グラフィックと実際の効果をみて判断する。

例えば青い瓶に入ったポーションっぽいものがある。見た目だけだ。が、これは実は氷爆弾っぽい。なのでその場でボタンを押すと爆発して大変なことになる。

 

説明書をゲーム内で拾えるが当然読めない。

上は実際にゲーム中で拾える説明書。やっぱり読めない。
別にゲームを進めても読めない。いっちゃえばエンディングまでずーっとこのままだ。
なんとこのゲーム説明書はゲーム中にばっらばらに落ちている。なので肝心の読みたいところがまったく手に入らずやきもきすることもある。

 

最初にこのゲームに感じたのは、説明書を読まないでゲームをする人へのアンチテーゼだ。よく聞くことだと思う。説明書なんて読まない、今どきのゲームはそもそも説明書すらない、DLやWebページにリンクを飛ばされるだけだと。

ゲーム制作サイドに対して批判をしているようにも受け取れるし、ゲーマーに対して説明書ちゃんと読みなよって言っているようにも思える。

 

ゲームを始めた当初はそう思っていた。
だが、クリアして感じたのはこれはエゴだ。
自分が好きなものをひたすらに詰め込んだ物語だ。少なくとも自分はそう感じた。
個人的な印象であって、別に事実じゃない。

 

昔のゲームには説明書が長々とついてて、全体マップとかもついてて読むのが面白かった。端々には攻略情報なんかが書いてあったり、敵のプロフィールなんかがあってゲームに深みを持たせていた。豆知識やお得情報があった。

そういう昔の良さ、楽しさをゲームに詰め込みたかったんだろう。思う存分、あの頃の懐かしさ、よかったと思えるもの、そういうのが宝探しゲームのようにめいっぱい実装されたゲームになっている。

 

一方で、難易度が高すぎる。おまけに暗号じみた文章は解読が非常に難しい。
というかほとんどの人は解けない、解けるはずもないレベルになっている。

これはWitnessやCypherなどとはまったく違うレベルだ。

このゲームについて思ったのはThe begineer's guideの作中の問答の一つ。
「ゲームの定義はなにか?」だ。
その問に「プレイ可能であること」と答えるわけだが、皮肉にも「プレイできるだけ」のゲームをやることになる。歩けるだけ、ゴールもなく、なんてことない空間をただあるき回るだけ。

 

同じようにTUNICにはなにをゲームとして期待するだろうか?プレイヤーはなにを期待し、どうクリアするのか。たぶんゲーマーとしては暗号を解きたいだろう。だが、これは普通は解けない。解く鍵もない。いや、一部は提示されるが普通に無理だ。

TUNICはゲームとして成立している。もちろんだ。
ただ暗号を解くためのゲームではない。そこをうっかり期待したゲーマーは地獄を見る。たぶんだが、暗号はおまけとしてみた方がいい。大事なのは読めなくてもニュアンスで我々はゲームをクリアできるってことだ。

ゲームならではの共通知識がゲームクリアに役立つ。お約束とか、自分で確かめて得た知識でなんとなくクリアできるのだ。それでいい。そこが期待の最大値にしたほうがいい。

 

それならそもそも文字を読ませない、完全ランダムにするなどにすればプレイヤーも暗号解読を頑張らなくて済むのだが、そこもまたゲーム文化特有の頼まれてもない暗号解読ゲームのための”おまけ”要素なんだろう。

なんだかなあ、そこらへんが罪深い。ゲーム制作者も、ゲームプレイヤーも両方に罪深く感じる。製作者側は用意して一部の人が楽しんでもらえれば、おまけとして用意する。プレイヤーは言われなくても頑張って読み解こうとする。時にはリバースエンジニアリングすら活用して。

 

ゲームの不健全さをちょっと味わったなーと思った。ここでいう不健全は時間を長く浪費するとか、ゲーム脳とかそういうやつじゃない。ただ、プレイヤーに対してどこまでを期待値とするかが明示されない、わからないゲームはかなり疲れる。そういう話だ。

 

The Witnessは究極的な美しさ。Inscryptionは邪悪さ満点。Cypherは知識という楽しさ。
Superliminalは美しい盲点を、で TUNICは…エゴだ。自分なりに言うならば。

昔のゲームは奇妙な不親切さが、妙な奥深さに感じていたと思う。
あの当時の懐かしさと苦しみに浸りたい人にはおすすめだ。