かやのみ日記帳

日々感じたことをつれづれと書いています。

艦これ劇場版感想!アニメ版見てなかったけど、それでも深いテーマだと思ったよ!

簡易感想

  • 主人公の吹雪ちゃんのキャラデザがよかった。性格もよかった。かわいい
  • 水上スキーは気にならない、というか兵器の擬人化を考えだすと無視できる
  • 提督がメインではないことは深みのあるテーマになりそう、良い設定
  • 史実ネタが気になりだすと製作者がニヤリと笑う(釣られるのが正義)
  • 艦これがなぜ生まれたのか、わかるとおいしい
  • 映画版も見ると兵器の矛盾について考えられる、守るためか殺すためか
  • 素晴らしく深いテーマで非常に大満足 艦これは…深いぜ…

 

 

艦これ開発時の重要な思想について

アニメの前に、まずゲーム版の説明をします。アニメ版とゲーム版は視点が違います。 

ゲーム版艦これのコンセプトは、兵站のボードゲームです。(戦略的視点のゲーム)

 

www.4gamer.net

 

田中氏:
 ええ。「艦これ」はいろいろな見方ができるゲームではありますが,では本質的に何のゲームかというと「兵站のゲーム」なんです。僕は,戦いで決め手になる大きな要素は「兵站」だと強く思っていまして。ええ,強く強く。幼少の頃に読みふけった本の影響かも知れませんが。

 

これは非常におもしろい点ですね!*1

 そして上記の対談では極めて重要な視点が、インタビューアからもたらされています。

 

4Gamer
 私が「艦これ」を凄いと思った理由の一つが,プレイヤーの立場が提督として首尾一貫していることだったんです。「艦これ」では「提督なのに空母のエレベーターの上げ下げを指示する」とか「提督なのになぜか艦載機の操縦をしている」とかいうことがない,これは凄いと。

田中氏:
 でもそれは,僕らウォーゲーマーからすると当然のことじゃないですか。戦闘級と戦術級と作戦級が全部混ざっているようなゲーム,そりゃ何級だ?っていう話ですから(笑)。20年前くらいによく居酒屋でした,熱く無駄な議論!

 

そう、ゲーム版艦これは、視点が提督で固定されているのです。 

そして艦これの最も重要だと思われる思想が語られています。

田中氏:
 実は「艦これ」は,最初はほとんど自分の趣味の企画といってもいい存在だったんです。旧軍の要港があった街や,奮戦して壮烈に,あるいは誰も見ていないところで悲しく沈んでいった艦艇を何らかの形で紹介し,一瞬でもいいからみんなで共有できるようなものを作りたいというのが,そもそもの発端でした。

田中氏:

 ええ。たとえば扶桑・山城の最期なり,それを見ていた時雨のシークエンスなんかにしても,全部をゲーム内で語るのではなく,「なにそれ?」と引っかかった人が,さまざまなメディアを通じて調べて,ある種,自分自身の体験と感動にしてほしいんです 

 

 艦艇を忘れないでほしい。自分で史実を調べて知ってほしい。
そういった熱い気持ちが艦これ制作の起点になったことを重視するべきです。

 

アニメ版について

 いろいろな評価はありますがネットで争点となっていたのは3話での如月轟沈でしょう。しかし、重要な思想の現れだったと思います。

 だから,そういう哀しみの史実や喪失感,もしくは痛みといったものを感じさせるプロトコルとして,ロストというのは当然の選択だったんです。実際にブラウザゲームとして実装してみたら,多くの提督(「艦これ」プレイヤーのこと)から「ロストは珍しい」「やめて」とも言われたのですが,むしろそれ以外にどうやって表現するんだと(笑)。

そう考えるとアニメ版はゲームの思想をどのように盛り込むかが決まっていたのではないかと推測されます。そしてその思想を提督でない視点、艦娘視点で描写することにしたんだと思います。

 

兵器としての宿命

2話ではちょっと引っかかる台詞があります。

”艦娘は生まれながらにして戦うことを宿命づけられている”と赤城が語っています。

これはなぜでしょうか?別に戦わなくてもよいのでは?と疑問に思いませんか。

 

しかし彼女たちはあくまで兵器の擬人化だと僕は思っています。*2

6話ではボーキサイト入りカレーを作ろうともしてましたし…*3

艦娘は兵器の宿命に縛られているのです。

 

兵器は国家の主権を守るための抑止力として機能します。兵器をもっていない国は”自分の国を守ることができない”として主権をもっていないことと同一視されます。すなわち国家として交渉のテーブルに着けません。いわゆる実効支配が該当する状態でしょう。

 

そして戦争とは外交の失敗、交渉の失敗、決裂から始まる。この交渉すら行えない状態は侵略とか略奪とか…そんなもんでしょう。戦争には目的があり、双方相容れません。

要するに戦争というのは、敵に強いて味方の意志を実現するための、暴力の行為である。

戦争は、外交の失敗以外の何物でもない。

 戦争とは (センソウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 キューバ危機、冷戦では、アメリカとソ連はこぞって核兵器開発に乗り出し、兵器の優劣によって互いを脅しあい、交渉を行いました。そして未曽有の戦争危機を対話によって乗り切ることができた稀有な例です。

 

このことから政治的に極めて危険であっても対話口を閉ざしてはいけない、という姿勢が大切なことがわかります。この対話口を閉ざす行為が行われれば、一触即発な状況でしょう。

 

さて国家間で緊張状態が発生した場合、兵器の優劣によって互いを牽制します。

こっちきたら痛いよ?→いやいや要求呑まないなら痛い目みるよ?

→うーん、痛そうだ…ちょっと譲歩するよ→まあしゃーないな、勘弁するよ

というように互いの妥協点を探りあう関係になります。

 

 兵器は本当は自衛のための抑止力として行使されるべきです。しかし、交渉が決裂した場合は要求を通すための暴力、殺意の手段として用いられます。

平和のための抑止力、そして戦時としての暴力。これが兵器の宿命だと思います。*4

 

劇場版艦これの衝撃

劇場版では提督が一切出ません。完全に艦娘の世界です。

そして深海棲艦は艦娘の無念によって発生することもあると語られます。*5

 

そしておそらくゲーム版での設定からでしょうが、ドロップ艦の説明として深海棲艦から戻れることもある、という設定が語られます。

これが永遠に終わらない戦闘のループ、艦これ世界の設定を物語っています。

艦娘はかつて仲間だったものと戦わなければならないのか。

 

そして映画終盤で主人公吹雪は、軍艦としての希望の部分であり、絶望、恨みの部分を切り捨てて生まれた存在であると明かされます。この切り捨てた部分が今回の元凶である深海棲艦です。

この海域は多くの船が散っていった無念とか怨念の集まりであり、すべてを破壊しよう、すべて海に帰そう、と吹雪を誘い身体を侵食していきます。*6 

 

 この場面で登場するのは艦娘と深海棲艦と海域*7のみであり、人間がまったく意識の外です。

ここからこの映画は艦娘としての生のあり方、すなわち兵器としての在り方を問うているのではないか、と思います。

 

 兵器自体に意志があったとしたら。本当は守るために作られたはずなのに。そして守れなかった、望まぬ戦いにより沈んだ。それは人間に翻弄された末路ともいえるでしょう。

 

兵器そのものに本当は善も悪もないはずです。しかし作られた目的には矛盾がある。だからこそ、兵器に意志があれば、悩むのは道理です。

 

そこで吹雪は受け入れることを選択します。恨みも殺意も受け入れて前に進みます。そして周辺海域はもとの静かな海に戻ります。

 

そう、この物語は造物主たる人間の意志が全く介在しないのです。提督が吹雪を抱きしめて熱く思いを語り吹雪がそれを受け入れる…なんてことはないのです。ただ兵器自身が自らの存在意義を互いにぶつけ合うのです。*8

 

それこそが艦娘、艦これの戦いなのではないでしょうか。兵器としての在り方を自分自身たちがずっとずっと問い続ける、主張をぶつけあう。それは自分自身の想いをより深く確かめるプロセスなのでしょう。だから人間はいらないのかもしれません。

 

艦娘の戦いは人類のためではなく、ただ己自身に課せられた宿命として戦い続けるのではないか。それはとてもつらい戦いですが、それでも吹雪は前を向き、そしていつの日か艤装を捨てる日が来るのでしょう。

 

そしてその戦いが終われば艦娘も役割を終えて、静かな海のように消えるのではないでしょうか。*9

 

 まとめ

 ブログ一発目からとんでもなく重たく書いてしまいました…が、ぶっちゃけ全然足りないです。すいません。もっと書きたいんですが、疲れました。

続きは劇場版艦これの円盤が出てからにします。それでは。

 なにか気になることがあったらTwitterやコメントでご連絡ください。

考察で足りてないこと、間違ってるとこあったらお気軽に教えてください!

 

 

 

*1:もしかするとここで読みふけった本が名作である「補給戦」だったりとか「海上護衛戦」だったりするんでしょうか。面白いですね。

*2:かなり曖昧ですし、ここは設定次第、想像次第ですね

*3:やはり資材入りの食事なんだろうか…ここらへんも想像次第ですね

*4:大量破壊兵器は抑止力としてやりすぎなので規制されるのも道理

*5:なんか話聞く限りだと艤装の断片からもちっこい深海棲艦が生まれるっぽい?

*6:ちなみにこのシーンがものすごくエロく、これだけで薄い本が100倍増えたことでしょう

*7:轟沈した艦の総体として赤く染まった意志となったと解釈する

*8:ギャングスタ・リパブリカ的な…とは言いすぎですかね

*9:心残りが消えて成仏するといえば…Angel Beats!ですね。