現代アートらしい、ワニがただただ回ってる企画展に行ってきた。
無料で入り口が開放されてて、ぱっと入れる気前の良さがあった。
会場も広々としていて、ちょっと混雑はしつつも行列になったりぎゅうぎゅうにはなってない感じ。回ってるだけでじーっと眺める人もそんなに多くはなく、ゆっくり作品を見ることができた。
で、中身について。
これは作者がWebにも書いているけど、「ワニがまわる理由は、聞かないでほしい。」
なぜ回ってるのかが気になる。けどそこに理由はない。
回っているというのが不可思議で、それ自体が奇妙な面白さがある。
それだけの展示だ。
さて、これを見る価値があるだろうか?回ってるだけだし…
自分も不安だったけど、結果的には行ってみて非常によかった。
ワニがまわるhttps://t.co/51sxfJRHzD
— かやのみちゃ🍡 (@kayanomicha) 2022年7月17日
ちなみにTwitterの投票をはじめて使ったけど100%行ったほうが良いでした。
平凡な要素以外を排除するのは難しい
ひとつはワニの統一性。作者が作ったと思われるワニは全部寝そべっていて、色が多少異なるくらいだった。で、姿勢もだいたいおんなじ。結構脱力しているのが多かったりとそれだけでもおもしろかった。
これについてなぜ気づいたか?それは観客が自由に作るワニとの比較があったからだ。
観客が作ったものの一部には人間の体を持ったワニもいたし、頭だけのワニ、恐竜っぽいのもいた。頭が2つあったものも。
別に悪いわけじゃない。たぶん作者もいっしょに作ったワークショップだっただろうし、たぶん子供が作ったんだろう。自由でいいと思う。
一方で、なんとなく統一性がない、メッセージがばらけるな…とも感じた。
つまりもしも直立しているワニとか、頭が2個あるワニ…そういったものが主展示にまぎれていた場合、おそらくはウォーリーを探せになってたはずだ。なんか変なワニがいないかに注目が集まってしまう。
主展示は統一されていて、色が変わってるだけで個々のワニをみてもしょうがない、というのがはっきりわかる。(…もし変なワニが主展示にいたらどうしよ、でもたぶん変なワニを見つけることが主の展示ではないことは明らかのはずだ)
この展示はワニが回ってる、ただそれだけの展示であり他の要素は排除しなければならない。ワニ以外が回ってちゃダメで、回り方がヘンテコすぎてもダメ。色が256色に輝き出してもダメ。
どことも変わらないような、ありふれたチープなワニが意味不明に、なんの理由もないように回ってないと意味がないのだ。たぶん。余計な意味を持たせない、これが結構他の人には出来ないことなんじゃないかと思う。
ワークショップで作られたワニたちは「他との差別化」が主目的に思える作品がいくつかあったように思う。こんなワニでもいいでしょ?仲間にはいるでしょ?と。でもそれは若干ピントがずれているような気がする。
たぶん主目的に沿うなら同じような色を塗って、同じような平凡な速度で、適当に混じらせるくらいがちょうどいいのではないかと思う。けど、それはやっぱり面白くないと普通の人は感じるだろうし、だからこそ展示スペースは分かれていたんだと思う。
なぜへの重圧
たぶんだけど作者にはものすごい量の質問という名の批判じみたものが寄せられるんじゃないだろうか。例えばこんな感じだろう。
「なぜワニなんですか?他のじゃダメなんですか」
「なぜ回ってるんですか?」
「もっと回る速さを調整したりしないんですか」
「もっとカラフルだったり姿勢を変えてみては?」
「これはなんのメッセージがあるんですか?」
これは質問を裏返すと「ワニ以外でもいいじゃないか」「回ってなくてもいいじゃん」「スピードが退屈」「色や姿勢にバリエーションがない」「メッセージ性がない」「作者の解説が足りない」
こんな感じの批判じみたものを少し感じる。(穿ち過ぎかもしれないけど)
けど、これらの質問に毅然とした態度を取ったり、傷つかずにいるのは難しいだろうなと思う。作品に対する自信を持つ、意見をはねのける自信は難しいように感じる。
ワニが回るに人をいれたら作品が変わってしまう。回り方がヘンテコなら「回転」にばかり主眼が置かれてしまい、テーマがやっぱり変わってしまう。カラフルなもの、奇抜なものが混じれば人は粗探しをしてしまう。メッセージを解説しすぎれば人は理解した気持ちばかりに酔いしれてしまう。
こうしたものを作者として受けるのは大変だよなあと思った。自分だったらたぶん耐えられない。作ることを辞めると思う。ましてや国立新美術館の展示である!他とは違う場所だろう。そこで変わらないものを作る勇気はすごいと思う。
この解釈もダメ
結局のところたぶんこの文章、解釈も全部ダメだ。作者の苦労だとか作品の周囲の影響とかを見てばかり。結局ワニがなんで回ってるのか、そこに答えを出さず、「回ってるなあ…なんでだろうね…」「わからん…わからんけど回ってるな…うん、なんでだ…」「わからんけど…なんか笑っちゃったな…」
ぐらいが正解のような気がするし、実際そういう解説文を書いているのでそうなんだと思う。