カツ丼、個人的ジャンル分け
ふと立ち寄った蕎麦屋でカツ丼のセットを頼んだのだが、カツ丼とはまったく難しい料理だよなあとしみじみ思う。自分の中でこれが最高!というカツ丼には未だ出くわしたことがない。おいしいカツ丼はたくさんあっても、最高と呼べるものは難しい。それはカツ丼の味の複雑さによると思う。
カツ丼は基本的にはごはん、タレ、卵、肉、たまねぎ、衣で構成される。これらが組み合わされることでカツ丼はできるわけだが、すべてを高水準でまとめることは非常に難しい。また味の方向性によってもそれぞれ意味合いが異なっていく。カツ丼にはある程度ジャンルがあると思うのだ。
家庭料理延長パターン
カツ丼のジャンルとして自分が考えているのは、まず「家庭料理からの延長パターン」。これはなんというか、卵もタレもマイルドな仕上がりで、非常にあっさりめを意識した味付け。どちらかというとたまごの味をふんわりさせることをメインにしている。たまねぎの味は活かすというかそのまんまで、お肉はわりかし硬めが多く、ごはんはそこそこ適当で、衣はへにょへにょ。「はいカツ丼ですよ」と言わんばかりな感じ。
家庭料理からの延長パターンのいいところは、あっさりしていて食べやすい。また奇をてらっていないのでおそらく作りやすいのだろう。価格帯もそこまで高いとは思わない。
だが、欠点というかつらい点は飽きるところだ。それにお肉やごはん、衣に力が入っておらずカツ丼を構成するだけの要素、入れなきゃカツ丼を名乗れないから入れましたみたいなところがよろしくない。タレもあっさりしていると、なかなかご飯がすすまないのもつらい。気合の入っていない田舎個人系のお店にありがちなカツ丼だ。
ガッツリ濃い目でごまかしパターン
次は「ガッツリ濃い目でごまかしパターン」。タレがすごく濃く、それだけでごはんが食べれるんじゃないかというぐらいなもの。もちろんカツにも染みているのでとにかく濃い。肉は薄めで硬めが多い気がする。たまごも薄いかもしれない。
このパターンは大量生産系というか、ちょっとチェーン系な感じ。ともかくとして濃い味にしておけばパンチが効いて一口目がうまい。肉にもしみているので、ともかく全体をごまかせるのがよいところだろう。
欠点というかありがちなのは、肉が薄かったり肉の味がほとんどなかったりするところ。カツ丼なのにカツっぽくないという気もする。またダシが濃いのでかなりしょっぱく水が必須になる。が、ともかくカツ丼が食べたい!というときに一時的に満たされるカツ丼な気もする。
肉にこだわりすぎパターン
最後が「肉にこだわりすぎたパターン」。カツ専門店系にありがちなのがこのパターン。ヒレカツとかロースカツ定食などに出てくるカツを転用して作られたと推測されるのだが、なんとなく調和しないのが残念。なんかこう、たまごとタレに対するこだわり度が低いことが多い。
どうもソースのほうが使用量と需要が多いのか、こういった専門店でのカツ丼は案外地雷度が高い気がする。一応頑張っている感もあり、他のパターンには見られないジューシーなお肉感をたっぷり味わえるが、いまいちソースに最適化されているのか微妙にごはんが進みづらいこともしばしば…。
結論:カツ丼は難しい
じゃあどれが最高なのか、最高のカツ丼とはなにか…と思うかもしれないが…しょうじきなところカツ丼って難しいのだ。どれをとっても難しい。ホントは合わない料理なんじゃないかと正直思う。卵とタレとカツという組み合わせがそもそも難しいのだ。だから料理店はそれぞれの目指すところで特化させて勝負するしかないのだと思う。
カツ丼はすべてを満足させることができない料理だと勝手に思っている。まあだからか自分は楽しくいろんなお店のカツ丼を食べているのだ。このカツ丼はどのジャンルなのか、何を目指したのか。そうして食べるごとに納得したり、やっぱりカツ丼って難しいよなと思いながらお茶をすするのが好きなのだ。