かやのみ日記帳

日々感じたことをつれづれと書いています。

日本人は働き方改革ではなく働き方改善しかしていない

 

やっていないと言えない”改革”

働き方改革と叫ばれてはいるものの、実際に現場レベルで展開されることといえば「仕事量の減らない残業抑制」みたいな名ばかり働き方改革ばかりだ。とりあえず残業はやめよう、業務改善をしよう。でも具体的なことはなにもない。とりあえず減らす。これだけ減りました、よかったね。

 

こんなものを誰も求めていない。それは一番現場の人間がよくわかっていることだと思う。思うに働き方改革を進めなければいけない人たちも困っているのだ。どうやったら対外的に自分たちは働き方改革してますよ、と言えるのか。自分たちに合った働き方改革とはなんだろうか。落とし所を探っているに違いない。

 

今では働き方改革やってないというと白い目で見られるのかもしれない。遅れていると感じるのかもしれない。それもまた日本流の空気感によるあいまいな同調意識のような気もするが…。

 

なぜ働き方改革でなにも変わらない、むしろ悪い方向に変わっていくのか。空回りしたような実態を無視したどうしようもないソリューション(笑)が展開されてしまうのか。それはきっと”現状の改善”から始まっているからではないだろうか。

 

まずは現状を調べる。なるほど残業時間が長い、会議の時間が長い…などなど。じゃあそれを減らせば解決だ。目標は30%低減。これで働き方改革達成!…なんて感じだろうか。でもそれじゃ働き方”改革”ではない。働き方”カイゼン”のほうが正しい言葉じゃないだろうか。

 

働き方改革=破壊的イノベーション

働き方”改革”とはイノベーションのジレンマに言う”破壊的イノベーション”を指すのではないか。対して日本企業のやっているのは”持続的イノベーション”、ニッポン大好きな”カイゼン”である。だから働き方”カイゼン”にとどまるのではないだろうか。

 

参考までにイノベーションのジレンマというのは、大企業が新興企業に負けるメカニズムをわかりやすく説明している。大企業の花形売れ筋商品は大規模な変更を加えることに躊躇する。売れ続けているのだからそのままにしたいという思いが働く。そうしてチャレンジ精神が損なわれ、停滞する。

 

それに対して新興企業は新たな発想により従来の市場になかった消費者の需要を掴む。いつのまにか市場の開拓が進み、かつての市場は新たな市場に駆逐され花形商品は崩れ去る。これを破壊的イノベーションという。従来の市場を破壊するからだ。

 

働き方改革を進める日本企業の内実は矛盾していて、実は今のままの働き方を変えたくないという力が強く働く。だから持続的なイノベーションしか生まれない。本当に必要なのは破壊的イノベーションなのだ。

 

改革というのは痛みなしでは成しえない。それになにより働き方改革を進めています?改革というのは”成し遂げた”というのが一番カッコいい。いつまでも続いているのなら「我が社は無政府状態が続いています」と言いたいのだろうか。それこそよっぽど恥ずかしいことを言っているような気がしてならない。

 

じゃあ働き方改革とはどういうものなのか。リモートワーク、週休3日制について考えてみよう。普通の企業ではリモートワークや週休3日制なんて”特別”じゃないと許可されない。申請を必要としたり、はたまた特別な事情のある人、特別な日に限るなどだ。すべての部門でなんてもってのほかである。だから”カイゼン”にとどまる。

 

働き方改革とはそういった根本の発想をまったく覆すものだ。つまりリモートワーク、週休3日制が”当然”なのだ。許可や申請などまったく不要である。なぜならそれが基本的な働き方なのだから。それは現状の働き方の延長にはまったくない、新しいものの考え方である。それこそが”改革”である。

 

おわりに

なぜ働き方改革で効果が出ないんだ、みんなの意識が変わらないんだ!と言う人がいると思う。そういう人に言いたいのは、そりゃみんなの意識が現状とちっとも変わってないから、ただそれだけである。

 

いや、働き方改革を進めているから徐々に浸透してみんな働きやすくなっていくはずだと信じる人もいるだろう。でもそうはならないのは結局現場に対する上からの漠然とした削減の指示だけだからだろう。それっぽーく現場が調整して微妙な数字をちょろまかす結果しか生まれない。上の意識が今のままあんまり変えずに更に成果を上げろという、まったく無意識の矛盾した要求が混在しているからである。

 

正しくは「残業を抑制せよ、働き方や人材確保など多方面であらゆる手段を許可する」と言わなければならないだろう。だがそんなことを言える人間はどこにもいない。だから「残業を抑制せよ」としか言わないのだ。今のままうまく削減できればダメージはゼロ。儲けだけが出てオイシイからである。

 

ようはどこも本気でやれずビビっているのだ。だから働き方改革なんてできやしない。だったら働き方改革という呼び名をやめておとなしく働き方カイゼンと日本らしくいえばよろしい。口だけ大きいのはもはや害悪である。身の丈に合った呼称をしていればいい。