かやのみ日記帳

日々感じたことをつれづれと書いています。

持続的でない決定

 

ロック司令官:ネブカドネザル(主人公たちが乗る船)の出発を許可したそうですね!
評議員:たしかにそうだが
ロック司令官:防御システムの責任者は私です!
評議員:そのとおりだ
ロック司令官:私は攻撃を退けるにはすべての船が必要だと考えています!
評議員:それはよくわかる、司令官
ロック司令官:ではなぜネブカドネザルを出発させるんです!
評議員:我々が生き残れるかどうかは、船の数ではないと信じるからだ 

-- マトリックスリローデッド

 この最後の評議員のセリフがとても好き。何度も見返してしまう。
これ、一見すると評議員がめちゃくちゃなことを言っているように思う。
だが物語の展開的にはたいへん正しく、この一手がなければ人類は滅びていた。
そういうセリフである。

 

物語は機械が大攻勢をしかけ、人類の最後の拠点である地下まで間近に迫っているところ。機械の軍勢は圧倒的であり、マトリックス(仮想世界)へダイブするために使用される船に搭載されているEMP、電磁パルスで撃退するしかないと考えられていた。

もはや一刻の猶予もない中、評議員は主人公たちの船を出発させてしまう。
それを総司令官が問い詰めに来るシーンである。評議員は穏やかに対応している。

 

物語の展開的に正しい理由は、機械と人間側の総力の違いによるもの。
機械は有り余るほど大量にいるので、到底人間側の戦力ではかなわない。
持久戦にしか持ち込めず、打つ手なく滅びる時間を延ばすしかできない。

だが、ネオが機械側と取引に成功して人類は滅びを免れる。
そのためにネオたちの船は自由にする必要があった。生き残るために。

そのことを暗に評議員が示しているのがすごく面白い、味わい深いセリフだ。
生き残るためには既存の装備を充実させても無駄で、新しい希望が必要なのだと。

 

これはある意味でよい意思決定者だなと思う。
イノベーションのジレンマを打ち破る必要があることを示しているから。

ロック司令官は持続的な方針にこだわっている。そのさきが破滅につながろうと現状を最大限維持するためのリソースにこだわる。現場が崩壊しかかっているのに、自由にする人員がどこにいると言うんだ!

だが評議員は違う。このままだと滅びるとわかっているなら、違う一手を打たなければならないのだと、だから自由にさせたのだと。

最善に見える方法に対して、新しい一手を探すことは無駄に見える。けれどそれをやらないとリフレッシュできない。新しい希望が見いだせないこともある。

うーん。いいセリフだ。考え方を変えるべきなのだと。
数を増やして対応しても無理だとわかっているのならば、新しい方へ。